サークル棟にて

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この話は、「友達の友達から聴いた~」とかいった類のものではなく、すべて私が体験した事実です。

私の所属するサークルの部屋は、棟の4階、つまり最上階にあるのですが、そこで、ちょっと妙なことがありました。

元々私以外に殆ど訪れる人のない土曜日。家に帰ってもやる事はないし、外はあいにくの大雨。昼頃からお喋りしていた先輩も帰宅してしまったので、私は一人、サークル室でフランス語の勉強をしていました。

いつもなら、まだ夕日が傾くには早い時刻だったのにもかかわらず、外は仄暗く、サークル棟も冷暗としていました。

こんな天気なのに、サークル棟には結構な人がおり、特に隣の児童文化研究会は打ち上げ会であったらしく、なかなかの賑わいを醸していました。普段は静かなサークルだけに妙だったのですが、もっと妙なのは、私のいる部屋の前を通りすぎていく人がいた事です。

最上階の、一番奥の、角部屋の、ミステリー同好会の部室の前を。もう、そこから先には部屋がないはずなのに……。

サークル室の入り口は開き戸であり、ノブの上部には磨りガラスが嵌め込んであります。そのドアの前を、明らかに誰かが通ったのです。シルエットから、おそらく女性だったと思いますが。

しかし、その時は気にしませんでした。確かに私がいるサークル室の先に部屋はありませんが、突き当たりに大きな風窓があるのです。隣の酒宴も今がたけなわのようですし、気分が悪くなって涼みに来ている方もいる事でしょう。

私はなんとなしに、ドアの方に目を遣っていました。すぐに彼女が引き返してくるだろうと信じて。そして、予想通りに彼女は再びサークル室の前を横切って行ったのです。

ふぅ、と私は胸を撫で下ろしました。以前、先輩から、

「このサークル棟って、デルんだよ。まぁサークル棟だけじゃなくって学校全体がだけど」

と聴いていたせいもあって、頭の片隅では怪談めいた想像をしていました。私の属する学校は、元々軍事施設です。その為か、いわゆる、都市伝説めいた噂が蔓延していていました。ですから、私がそういった所懐に至ったのも当然だったのかもしれません。

そのような事があってから、数分後。私は再び参考書に目を落としました。けれど、また廊下から足音が聴こえて来たのです。またか、と思い顔を上げると、どうも、先程と同じ女性であるようなのです。また二、三分位視界から消えると、同じように引き返していきました。その折は、相当飲み会でヤラれたのかな、と少し気の毒になったものです

ですが、三度目のこと。先程からと同様にカツコツと足音が聴こえ、私の居る部屋に差し掛かろうとしてたのですが、急にドアの前で足音が止まったのです。窓に映る輪郭から、やはりあの方のようでした。今まで立ち止まるなんてことは無かったので、どうしたのかな、と思って私は様子を伺っていたのですが、うつむいたまま動かないのです。そして、ガラス越しに寸刻、私の方を向いたかと思うと、そのまま突き当たりに歩を進めていきました。

それから、五分が経ち、十分が経っても、彼女は引き返してこなかったのです。私は、恐る恐るドアを開けました。しかし、そこには誰もいなかったのです。

私は空恐ろしくなり、親交がある三階の野宿研究会の部屋に移動しようと思い立ちました。その時、何気なく隣の児童文化研究会を見ると、いつの間にやら飲み会は終わっており、部屋には誰もいませんでした。一気に血の気が引いた私は、四階にあるサークル室をすべて回ってみました。しかし、電気が点いているサークル室は、一つも無かったのです。

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