学生寮 No.1
あれは、大学に入学した年でした。
2年前に改築されたばかりの学生寮に入居が決まりました。
私は、これから迎えるキャンパスライフに想いを馳せていました。
寮生はみな遠方から進学した子ばかりで、
個室でも一緒に過ごす時間が多いため、
仲良くなるのも早く、
楽しい時間を過ごしていました。
入学式を終えると、
大学構内は新歓行事でとても賑わいます。
私も友人たちと、
サークルや、隣の男子寮のコンパに参加し、
なれないお酒を飲んだり、
高校までとは違った大学生らしい雰囲気を楽しんでいました。
そんなある日のことです。
その日も、男子寮の寮生と、男子寮の和室で飲んで、
ユリと一緒に自室のある4階まで、階段を登り始めました。
少し飲み過ぎた私たちは、
階段を登るのも一苦労。
何とか三階まで登り、4階の踊り場を目指します。
すると、真ん中辺りまで来たら、視線を感じ立ち止まりました。
(なんだろ?ユリは右にいるのに)
ユリも気づいたらしく、立ち止まっています。
ユリと顔を見合わせたとき、
正確にはユリの顔をみると、
ユリの視線は私の後方に固まって、微かに震えています。
「カ・・・カナ?
あれ・・・
あれ見てexclamation ×2」
かすれた声で、精一杯絞り出すようにユリがいいます。
私は振り返ると、
階段のステップの裏側
下の階段の天井部分に
長い、振り乱れた髪の女が、しがみついて
私たちを睨み付けているのです。
私たちは、あまりの光景に、震えながら立ち尽くしているしかなく、
足も動かないし、叫ぶにも声が出ません。
「あ・あぁ・・・」
二人して、そんな声を出しながら、固まっていると、
4階のドアが開く音がしました。
同時に、女は吸い込まれるように消えました。
ユリと顔を見合わせ、過ぎ去った恐怖に震えていると、
上から先輩が降りてきました。
カスミ先輩に事情を話すと、
「あぁ・・・
トモコも同じこと言ってたなぁ・・・
気にしないし?
まだまだあるんだから・・・」
そういうと、カスミ先輩は浴場へ向かって行きました。
新しさと裏腹に
古よりの恐怖
この先私は無事に過ごせるのか不安です。